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「ATRN」さんの航海日誌

ATRN'S LOGBOOK

「ATRN」さんの単独沖縄クルージングその2 種子島~屋久島 9月3日

9月3日午前 3:00

種子島西之表港を出港した「ATRN」さん。

夜中の荒れた海は、予想以上の恐怖

「まだ死にたくありません」と神に祈ったそうです。

種子島から、すぐ隣の屋久島が、何と遠いこと。

避難した漁港で、人情に触れ・・・

一度に疲れが吹き飛んだのもつかの間・・・

新たなアクシデントが待ち受けていました。

まだ、沖縄にたどり着きそうにない・・・

ATRN」さんの単独沖縄クルージングその2をどう

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種子島西之表港出港

9月 3日

3:00 西之表港を出港する。2度目の夜間航行 港を出るとかなり海が荒れていた。
大雨になり雷がひどく 波も高い、 ここでこの航海1度目の怖さを体験する。

波と大雨をレーダーが表示してしていて、レーダー画面がわかりづらくなります。

雷が光った時に見える海が照らされる。その時の海は大変不気味でした。

白波が立って荒れていますから、ライフジャケットは勿論着用。
転覆した時の為に携帯を防水ケースに入れて首からぶら下げる。

この雨と波で転覆したら、岸まで辿りつけないかもしれないかもと覚悟する。

「まだ死にたくありません」と神様に祈る。

浅瀬に座礁する事が怖く・・・
岸から離れて航海しようと出航前から決めていたので、かなり距離がある。

転覆したら、「岸まで泳がれへんかもしれんなぁー」と・・・

この時の速度5ノットから10ノット、 この状態で夜明けまで走ります。

6:36 夜明けになると気分的には凄く楽になりました。

自分の目で周囲を確認出来るのと・・・
レーダーと雷の光だけで海況を確認するのでは全然違います。

そして種子島海峡で波がさらに大きくなります。

フロントガラスに連続してバケツの水をひっくり返したような状態になります。

久島宮之浦港

7:37 このまま進むのは危険と判断し・・・
屋久島宮之浦港近くの砂浜でアンカーを降ろし仮眠する事にします。

屋久島の島影に入ると嘘のように全く波が無くなります。

初めてのアンカーはスムーズに動き、砂浜にしっかりと食い込んでくれました。
天気予報では風向きが全く逆になるとの事で、波も小さくなると判断する。

9:00 仮眠中ボートが揺れだすので風向きが変わったと感じて起きます。
出発しようとウインチを巻こうとすると問題発生!

ウインチを途中まで巻くとフリーフォール状態になり海底まで全てチェーンが落ちる。

チェーンを手で巻こうとするが・・・
重すぎてアンカー部分を巻き上げる事が出来ないと判断。

勿体ないがチェーンを切ろうと決断します。

ここで毎朝、毎夕定期連絡を下さるマリン大阪の中島さんから電話が入ります。
中島さんに「ウインチが巻けない」と相談する。

すぐに中島さんから連絡が入り、指示された事をすると・・・
ガラガラと巻き始め、ウインチがしっかりとチェーンを巻き上げる事が出来ました。

チェーンとアンカーにおさらばせずに済みました。

「助かったぁ~」

中島さんと溝口さんのお蔭であります。

9:30 風向きや波の向きを確認し、宮之浦港近くから出航します。

屋久島空港を過ぎた辺りからまた波が強くなります。
10ノット程度で走れるので、そのままトカラ列島へ向かう事にする。

11:30 屋久島沖のトカラ海峡辺りで波が大きくなり、ボートの上下の揺れが激しくなる
「これは酔いそうだなぁー」と思った。 横揺れと違い、上下の揺れはしんどかった。

ますます波が大きくなり、岸が見えたり見えなくなったりしてくる 波の谷間が深い。

ここで2度目の怖さを体験します。
外海は荒れたら怖いなと強く思いました。速度は5ノットしか出せません。

何度か横転しそうになる、波にもまれる。
キャビンの中を移動するのも不可能でハンドルから手が離せない。

床に転がってしまったiphoneを拾うだけでも困難です.。

「怖い怖いめちゃくちゃ怖い」です。

一度屋久島の港に退避しようと港を探す。 一番近い港が栗生港という漁港でした。

船首の向きを変えるのも困難なくらい、大きな波が連続でくる。

横波を受けたら駄目だとマリーナでもいつも聞いていたので・・・

横波を受けないように、 一瞬で船首方向を変える事が出来ました。

栗生港の沖は暗岩などの浅瀬があり・・・
かなり緊張したが無事に栗生の港内に入る事ができた。

この時GPSの図は便利だなと初めて思いました。

栗生浜海水浴場

12:39 栗生漁港入口の海水浴場。漁港に入らずに砂浜で波が収まるのを待つ事にする
アンカーを降ろし、ポットのお湯を沸かし、カップラーメンを食べながら休憩する。

「小さい時にこんな事に憧れていたなぁー」と思います。

見知らぬ地でボートの中で湯を沸かし、ラーメンを食べるなんて・・・
なんとなくウキウキします。

栗生浜の鳥

12:51 野鳥も休憩しています。

インサルマット・衛星電話

14:35 故障などで漂流したり、トカラ列島の電波事情を考え・・・
インマルサット衛星電話も用意しました。

15:00 漁を終えて漁船が港に帰ってくる。

砂浜で退避しているこちらのボートを見て、ジェスチャーで・・・

( 沖、危険、漁船を叩きながら、漁港へ入れ! )

これを何度か繰り返していただいた、有難かった。

しかし、漁船が帰ってくるのなら走れるのかもしれないと思い・・・ 出航する準備をする。

これが素人の怖さです。

そして沖の浅瀬地帯を超えたあたりから・・・
波の種類が変わり、とてもトカラ列島は走れないと断念する。

「やっぱり無理だ、走れません! 」もう一度、栗生港へ向かいます。

砂浜からその様子を見ていた人が何人かいたので、恥ずかしかった。

栗生港

15:30 栗生漁港に入港します。

ここでボートの中からガソリンスタンドを探し・・・
ローリーを栗生漁港に呼ぶ手配をします。
20分程で来てくれるとの事で、接岸せずに待ちます。

屋久島上陸

15:53 漁師さんから今の沖の状況や明日の海況などの情報をいただく。

生まれて初めての屋久島に無事に接岸、上陸。

屋久島には寄港せずに、種子島から奄美大島まで一気に走る予定だったので・・・
想定外だが、屋久島に来れて良かった。

上陸できてかなり嬉しい。

給油風景

15:53 給油にすぐに来て下さって良かった。
少ないが100リットル、4度目の給油である。

有限会社日高石油店 0997-47-2946
男前で楽しい方が 栗生漁港まで来給油に来て下さった。

漁協に行き、明日の早朝までの停泊許可をお願いする。

漁協長さんが快く許可をして下さいました。

アカバラ水揚げ

17:21 地元の漁師さん。
この漁師さんが後にお世話になる武丸船長さんです。

この大きな魚はアカバラと言うらしい。

地元の人たち

17:23 漁船に集まる地元の人達

がんばった相棒DFR

17:39 ここまで無事に走ってくれたDFR 「沖縄まで行って無事に帰れますように!」

海ガメ発見!

17:42 なんと栗生漁港で海ガメを発見!
結構大きな海ガメ・・・ その近くで海ヘビも見ました。

屋久島って凄いところです。

「I」さんとの出会い

17:59 このDFRの前に立っておられる方が、砂浜で一部始終をみておられた方です。
I さんと言い、消防団長もしておられて立派な方です。

そして、I さんが漁港で声をかけて下さいました。

「 鹿肉を食べないか?」と・・・

「え? ほんとに」

ありがたきお言葉、喜んで二つ返事です。

粟生浜

18:02 栗生港の入口 この砂浜で3時間程退避していた。

海ガメが産卵にくる砂浜らしい

我楽呑小屋

18:21 我楽しい呑べえー小屋 とても素敵な空間です。

調理の準備

屋久鹿の部位

18:22 鹿肉を食べさせていただく場所です。

ここはお店とは違い、中央のご主人 T さんの隠れ家的な場所です。

T さんは凄腕猟師であり、動物や山の事も熟知されています。

美味しい鹿の仕留め方や、鹿の美味しい部位もよくご存じです。

18:25 屋久島の鹿は少し小ぶりでヤクシカと言うらしいです。

屋久鹿の刺身

18:42 ヤクシカの刺身です。
わさびと醤油でいただくのですが、とにかく甘くて美味しい。

ヤクシカの刺身は毎日でも食べれそうです。

まさかこの航海でこんな贅沢な食事を出来るとは思ってもいませんでした。

とにかく「美味しい、美味しい、美味しい!」

一期一会

19:55 T さん、T さん奥さん、I さん、N さん達と楽しく食事。

この時、生まれて初めてゴーヤを食べました。
とても美味しかった 奥さん有難うございました。

ちょっとしょっぱいような、苦いような、美味しかったです。

屋久杉コースター

20:30 T さんより屋久杉で作った、屋久島の形をしたコースターをいただきました。

屋久杉とは樹齢1000年以上のものです。1000年以下では屋久杉ではありません。

後にこのコースターがお守りになります。

栗生港にて就寝のつもりが
アクシデント発生!

21:34 明日は早朝に出航の予定。 漁師さんに聞くと明日の海況は良いらしい。

干満差が気になるが、明日の準備をしてから就寝する。

25:00 なにかボートがコンコンと当たる感触で目が覚める。

起きてビックリ左舷で係留していたボートが、右舷になっている。

夢でも見ているのかと思ったが、外に出ると船尾側の係留ロープが無くなっています。

慌ててスタンスラスターで元に戻そうとすると・・・
岸壁に寄せる寸前でスラスターが動かなくなった。

係留ロープが絡んでしまった、引っ張っても動きもしない絡まったロープ。

その時近くで釣りの準備をしていたカップルの方がいて・・・
潜ってくれるダイビングショップが近くにあると情報を聞き・・・
朝まで寝ようとしていました。

すると先程のカップルの男性の方が、パンツ一枚で水中メガネと足ヒレを付けて・・・
ナイフを持ち、 ボートまで来てくださいました。

そしてなんと今、潜ってくれるとの事です。

ありがたき好意に甘え、無事にロープをスラスターから切断する事ができました。
日高石油店前にお住みの B さん、有難うございました。
お蔭で安心して早朝出航する事が出来ました。

そしてロープが絡んだ時にスラスターのヒューズが切れていたので、
エンジンルームに行き、ヒューズ交換です。

「マリン大阪の溝口さん!ヒューズの予備持っていって正解でしたよ~」
交換の練習もしておいて正解でした。

結局、右舷になった時に前方ガンネルのゴムが傷ついただけで済んだ。

26:00 もう一度、朝まで就寝します。

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